精神障害者の権利と法

京都アニメーションの放火事件の被疑者に対して、「精神疾患かもしれない」という情報が早くも飛び交っています。真偽は別として、この手の情報は凶悪犯罪発生時に必ず起こります。精神疾患(正確には心神喪失ないし心神耗弱)の場合、罪が減免されるからです。

その反応として「精神障害者は危険だから隔離しろ」「一つのケースをもって精神障害者全体を差別するな」等の情報が行き交うのも常です。そして、以降は往々として曖昧な感情論になりがちです。

ところで、現行の日本において、精神障害者の権利はどのように法によって定められているか、詳しい人はどの程度いるでしょうか? テレビやネットの意見、友人との会話を通じて、詳しい人は少ないと私は感じました。

言うまでもなく日本は法治国家で、権利は法によってその内容が具体化されています。人権や社会制度に関わる議論をする際には、最低限の法の知識が欠かせません。この記事では、精神障害者の権利と、それを定める法をまとめます。それによって、様々な場所での議論の質が向上することを私は望んでいます。

精神障害者には「合理的配慮」が必要

障害者権利条約は、国際的な障害者保護の指針となる条約です。この条約の第一条にこう定められています。

この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。
 障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。

(太字強調は著者が付した)

障害者権利条約での「障害者」は、精神障害者も含まれています。現在の条約締結国は177ヶ国であり、全世界196ヶ国のほとんどが加盟しているので、この条約が国際的な障害者権利のあり方を定めたものと言えます。

続いて第二条にはこうあります。

この条約の適用上、 「意思疎通」とは、言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用しやすいマルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいう。 「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。 「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。 「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。 「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。

(太字強調は著者が付した)

この「合理的配慮」というのが障害者の権利保護のコアです。その内容をシンプルに言うと、「障害者に対して、可能な範囲で配慮してあげましょう」というものです。

わかりやすい例をあげると、車椅子の人の為のスロープやエレベーターです。階段が使えない人の為に、スロープやエレベーターを設けることは、「可能な範囲での配慮」と考えられています。

配慮は「行政サービス」と「就労」の際に主に必要となる

日本において、配慮が必要な場面は立法によって定められています。そのうち主となるものは「行政サービス」と「就労」です。

このうち「行政サービス」については皆さんすぐに理解します。「障害者であるだけで、国のサービスが受けづらくなるのは良くない。国は彼らに配慮すべき」と直感的に理解できるからです。

しかし「就労」になると話は別です。職場における「合理的配慮」の内容を理解している人がどれだけいるでしょうか? 何をすればいいか(そして何をしてはいけないか)わからない、というのが正直なところではないでしょうか。

就労時における配慮の内容は、次回の投稿を参考にしてください。

まとめ

  • 精神障害者含め、全ての障害者は障害者権利条約で一元的にその権利を定められている
  • 「合理的配慮」とは、「障害者に対する可能な限りの配慮」である
  • 日本において配慮が必要である主な場面は「行政サービス」と「就労」である